スピードの元ネタは新幹線大爆破なのか? 

「スピード」(1994年)は主人公を演じたキアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックをスターにした大ヒット作品です。

それとともにこの作品は東映が製作した「新幹線大爆破」(1975年)のパクリだと話題になる作品です。逆にNetflixでリメイクされた作品が世界中に配信されますと、これは「スピード」のパクリじゃないかという声も上がりましたね。

さて真相はどうでしょうか。それを考察したいと思います。

 

キアヌリーブススピード新幹線大爆破 スピードとはどんな作品か?

まずその前にこの作品についての解説をしてみましょう。ハリウッドのアクション映画の主流である銃撃戦から、エレベーター、バス、電車という乗り物に変わるところが新趣向の映画として大ヒットしました。私は封切り時に映画館で観ましたが、今回この記事を書くために、アマゾンプライムで配信したものを再鑑賞しました。それでエレベーターと電車の部分はすっかり忘れていて、この二つの見せ場は初めて観るような感じでした。おかげでこれはどうなるのかとハラハラさせられました。

このふたつの場面を忘れてしまうほど、作品の肝はスピードをある速度に落とすと爆発してしまう爆弾を仕掛けられてしまうバスにあるのです。このある程度スピードを落とす爆弾というのが、「新幹線大爆破」と同じなのですね。

この脚本を書いたグラハム・ヨストは最初の脚本をパラマウントへ売り込みますが拒否されます。バスで話が終わってしまうシナリオだったので、バスの場面が2時間もあるのは長すぎる。これでは観客が飽きてしまうよという理由で不採用にしました。そこでヨストは電車でのアクションを付け加えて脚本を書き直し、20世紀フォックスに持ち込み採用されました。そこで採用されたのでした。

キアヌリーブススピード新幹線大爆破 マッチョな俳優とは正反対の俳優を起用したのはなぜか?

キアヌ・リーブスを起用したのは、マッチョでないから男性観客に威圧感がないし、本作を見ると初々しくてさわやかなイメージですからこれは女性観客にも受けるだろうと踏んだのです。これは読みが当たりましたね。

この時代はシルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーのような筋骨隆々なアクション映画スターが活躍していましたからね。まあアメリカ人は筋肉がもりもりというところに強さを感じますから、スーパーマンも筋肉質でありますし、今でもジェイソン・ステイサムやドゥエン・ジョンソンらがアクションスターとして活躍しています。

マッチョでないキアヌはこのころはさわやかなイケメン俳優ですし、髪型も短くした坊主頭は公開時に反響があったものです。男子は同じ髪型にしてくれと頼み、女子はこの坊主頭のさわやかイケメンに惚れました。

キアヌリーブススピード新幹線大爆破 キアヌリーブスのアクション路線はここから始まった?

キアヌは当初は本作品でアクションをするのは消極的でしたが、ヤン・デ・ボン監督は彼を説得してアクションもなるべくなら彼自身で演じるようにしました。そのおかげでキアヌはアクション路線に開眼した・・・のでしょうかね。

キアヌが爆弾を仕掛けられたバスのドアのガラスを割ってしまうところがありますが、これは事故でシナリオに書かれていません。しかし、デ・ボン監督がおもしろがって撮り直さずそのまま使いました。

ヒロインのサンドラ・ブロックはこの作品に出演するためにバスの運転免許を取得、一発で合格しました。

またバスの車中で後ろのうるさい男から離れるために、チューイングガムを置くふりして席を離れるのですが、これはサンドラのアドリブだそうです。

スピード新幹線大爆破 東映の新幹線大爆破と新作の新幹線大爆破の間にはスピードがあり。

さて本作の公開当時の観客には乗り物がスピードを落とすと爆発するというアイディアは「新幹線大爆破」(1975年)のパクリではないかと言われました。逆にこの作品をNetflixでリメイク(というよりオリジナル版の話の続きという恰好をとっていますから続編というのが正しいですね)したときはこれは全世界に配信されましたので、これは「スピード」のパクリじゃないかと言われました。

たしかによく似ています。ですが、脚本を書いたグラハム・ヨストは元ネタは黒澤明がハリウッドで撮るために準備していた「暴走機関車」だと言います。彼の父親がこの企画を進めていたスタッフのひとりだったので、父親からこの話を聞いて後にはシナリオも読んでいたそうです。

「暴走機関車」はブレーキの壊れた機関車が猛スピードで走るという話でヘンリー・フォンダ主演で予定していました。しかし、諸事情により頓挫します。

後に(1985年)映画化された「暴走機関車」はオリジナルから改変したものが多くて、ヨストは参考にならないとこの映画からは参考にしていないと述べています。

なあんだ「新幹線大爆破」じゃないのかとがっかりする向きもありますが、スピードを落としたら爆発するのはパクリじゃないのかと突っ込みたくなりますね。おそらくはヨストは参考にしていると思いますよ。アメリカは訴訟の国ですから、これを盗作したと言うと裁判沙汰になるのを恐れ、「新幹線大爆破」から拝借したというのはまずいと判断したのでしょう。

実際この映画を見た東映の社員のなかには訴訟しようという声も挙がったのですが、社長はやめておけ、ややこしくなると言って訴訟しませんでした。

これは東映にとってはそうしないことはよかったことです。なぜならこのアイディアは「夜空の大空港」(1966年)のパクリだからです。この作品は旅客機が高度を下げると爆発する爆弾を仕掛けられていました。

スピード新幹線大爆破 新幹線大爆破もパクリだった?

たまたまこの作品を観ていた「新幹線大爆破」の犯人のひとりを演じた山本圭がプロデューサーにそれを告げたところ、「あっ、わかった?」と答えたそうです。

というわけで「新幹線大爆破」のこのアイディアはパクリでした。しかし「新幹線大爆破」の見どころはこればかりではなく、次から次へと見せ場がてんこ盛りなのが面白かったですね。その点、よく考えて作られた作品なのです。ですので、そこをパクリだと責めたくはありません

スピード新幹線大爆破 創造物はすべて過去のものの模倣である。

もう映画の初期からいくらの映画やテレビドラマが作られたのでしょう。もうすでにアイディアやストーリーは出尽くしました。パクリや盗作とは言わないまでも新作を見ても、どこか過去に似た作品を連想させても仕方ないでしょう。

また創造物は過去からの作品を模倣するものです。まったく新しい観たこともない作品なんて出来ないでしょう。作者だけしかわからない前衛作品なら、まあ見たこともない作品ができるのでしょうけれど。

まあ「スピード」の元ネタは「暴走機関車」だけど爆弾のアイディアは「新幹線大爆破」だろうと推測します。しかし「新幹線大爆破」も「夜空の大空港」のパクリなのですよ。という結論にいたりました。

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