「孤独のグルメ」は原作・久住昌之、作画・谷口ジローの漫画のテレビドラマ化ですが、この度劇場用の作品が出てきましたのでここで取り上げたいと思います。
テレビドラマは2012年よりテレビ東京で放映されました。2025年度現在ではシーズン10までのテレビシリーズと特別編、スペシャルドラマが数作製作されるほどの人気を得ています。
テレビ東京の低予算番組ではありましたが、DVDと動画配信も行い二次使用も多額の収入を得ました。
となると、残るは劇場用映画でこれを製作するのは自然な流れであります。
孤独のグルメ 韓国 テレビドラマが劇場用映画になるのは珍しくないのだが・・・・
劇場用映画は当初は主演の松重豊は交流のあったポン・ジュノに演出の依頼をしたが、忙しいので断ったと言います。私が邪推するにはジュノ監督はあまりこれに気乗りがしなかったけれどもそれを言わずにスケジュールの都合を言い訳にしておいたんじゃないかなあと思います。だって一人のサラリーマンがある店に入って料理を食べているだけの内容などには食指が動かなかったのでしょう。
テレビドラマシリーズは韓国でも人気を得ておりだからジュノに監督を依頼したのです。気乗りがしなくても韓国でも人気があるのだから、演出してみようかと考えそうなものです。しかしジュノ監督は断りました。彼の芸術的意欲を全然駆り立てなかったと思われます。
孤独のグルメ 韓国 ポン・ジュノ監督に演出を断られて・・・
それで松重は日本の映画監督で誰かいないかなあ、と考えました。しかしある時、「俺が監督しようかなあ」とつぶやいたところ、彼の所属事務所の社長が「それはいいんじゃないか」と言ったので、松重もやる気になったそうです。
テレビ東京の看板番組に成長した作品であるととも松重豊の代表作にもなったわけですから、この劇場用映画に力が入るのは当然でしょう。監督・主演のほかに脚本も担当(田口佳宏と共同執筆)しています。
映画の興行収入は10億円突破しました。これは松重の目標にかかげた興収10億円を超えたということで、「鬼滅の刃」には遠く及びませんがまずまずの成績でしょう。
孤独のグルメ韓国 韓国でもテレビドラマが受けた理由は?
さて、テレビドラマシリーズは韓国でも高視聴率を稼ぎました。おひとり様の外食が予想外にも受けたということです。
韓国では食事は家族、友人、恋人など複数の人間と一緒にすることと言われていて、ひとりで食事をしているのは恋人や友人、あるいは家族がいないひとりぼっちのかわいそうなモテない人とみなされるのです。生物がなぜ生きるのかといえば、自分の後継者を残すところにありますから、人間も子供を作るのは生き物としての義務であります。そこで結婚、子育てなどは後継者を残していく使命があります。だから一人で居る者は半端者だという感覚がありますね。
これが近年では人間必ずしも結婚しなければならない、彼氏・彼女がいなければならないという固定観念から解放されて、一人で楽しむ時間があっていいじゃないかという風に変化しました。韓国もお一人様が増えたことがありまして、ひとりで食事というのを人目をはばかるという感覚も薄れました。そこへ、井之頭五郎(松重豊)がふらりと寄った店で食べるだけの番組が受けたのです。
孤独のグルメ 韓国 テレビドラマが受けたのは時代の変化もあるのだろうか?
しかしそれは韓国だけでなく、日本も同様でしょう。お一人様はモテない寂しいかわいそうな人ではありません。日本もお一人様を見る目が韓国同様変わりました。人生はいろいろあって結婚する人もしない人も、恋人の有無など自身の人生を他人が決めることではないということもあって、日本における人気も韓国とはさほど変わらない理由でしょう。この番組は中国、台湾でも人気があるように、やはりこの両国も家族主義という観念が薄れてきて、独身貴族という考え方もあるのでしょう。これはもう万国共通なのかもしれません。今回の劇場用映画ではフランスや韓国でのロケもしており、このヒットなら続編で中国や台湾へ行く話ができるのかもしれません。
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