「バレリーナ:The World of John Wick」が2025年8月22日に公開されます。これは「ジョン・ウィック」シリーズからのスピンオフです。まあシリーズ4作目「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(2023年)の終わり方がああいったものですから、これでシリーズは打ち止めだろうねえと思っていました。スピンオフを製作することでシリーズを継続するというのも珍しくはないでしょう。シリーズ3作目「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019年)に登場した舞踏家・暗殺者のバレリーナを主人公に据えています。従ってこのスピンオフはシリーズ3作目と4作目の間のことを描いたものにしています。
ジョンウィック ひどい ジョン・ウィックはどんな映画なのか?
「ジョン・ウィック」(2014年)は凄腕の殺し屋ジョン・ウィックの復讐もので、武芸やガンを組み合わせたガンフーという造語を生み出したアクション映画です。主演のキアヌ・リーブスは武芸に興味があって、千葉真一の大ファンであります。また「マトリックス」(1999年)でのアクションもカンフーを取り込んだものになっているので、本作でもそれとガンアクションを組み合わせたものにしています。「マトリックス」ではCGを多く取り込んだアクションが生身の人間にできない表現をしていて観客を驚かせましたが、でもこれも何回もやっていくうちに慣れてしまいつまらなく感じてしまいます。映像に厚みが無く薄っぺらいものを感じるところが欠点ですね。アクションは普通ではできないものを見せるからスリルと迫力を感じるので、どんなに凄いアクションを見せてもCGで描いた絵ではいまいちですね。
ジョンウィック ひどい ジョン・ウィックはCGまみれのマトリックスよりも良い?
そこは「ジョン・ウィック」のスタッフやキアヌも感じたでしょう。本作ではキアヌ自身の言葉を借りれば、自分自身でアクションシーンの90%演じたと言っています。彼はジョン・ウィック役のために武器と格闘技を1日8時間を4か月費やして訓練しました。
ナイトクラブでの格闘場面は撮影当日に手順を覚えたそうです。
その撮影場面ではキアヌは38度の高熱を出していたのですが、彼は椅子に座れないほどだったとはチャド・スタエルスキ監督が証言しています。
ジョンウィック ひどい CGに頼ったマトリックスからの反省か?キアヌ・リーヴスがスタントのほとんどをこなしていった。
スタエルスキ監督は「マトリックス」でキアヌ・リーヴスのスタントを務めていたので、今作ではお互い気心もしれています。
スタエルスキ監督とキアヌ・リーヴスが組んだ本作は「マトリックス」で描くカンフーとガンを組み合わせたガンフーアクションなんて造語を生み出しました。
ジョンウィック ひどい 監督も主演も日本びいきである
カンフーから取り入れたのに、作品自体は日本への愛着を見せます。でも相変わらずその日本を思わせる描写がおかしなものでした。日本語らしいけど怪しいセリフを言うところは愛嬌ですけれど、ジョン・ウィックのストイックさは侍をイメージしているのでしょう。これが3作目ではもう無茶苦茶なくらいで、唐突に表れる日本描写はう~んとなってしまいます。
スタエルスキ監督もキアヌも「日本に惹かれている」「ほんとは日本で撮影したかった」というほど日本びいきです。だからなのかカンフーを体得したのにキアヌは千葉真一ファンです。
まあ外国人が日本描写をすればいろいろおかしな感じになりますが、逆に日本人が外国描写をすれば現地の人から見たらおかしくないですかね。今はそうでもないけど昔はインド人が出てきたら頭にターバン巻けという感じですね。
ジョンウィック ひどい 過剰な演出と演技が受け入れられない?
あとはどうも過剰にかっこつけた演技と演出や音楽などなんか違和感を感じます。
なんといってもジョン・ウィックが亡き妻から贈られた子犬が殺されてその復讐に出るというこのストーリーがどうもなあ、となりますね。アメリカは愛犬家が多いですから、犬を飼うことには過剰な愛を注ぐのもしばしばですから、この設定なら受けるぞということなんでしょう。でもやっぱり子犬が殺されてその復讐に大量に敵側を殺してしまうというのは過剰すぎますし、いくら悪党どもとは言え殺しすぎですね。
それと登場人物が昔のアクション映画のようなかっこつけ演技が笑いに昇華してしまいます。昔ならそれに観客が夢の世界になってしまうが、今ではスターでもかっこをつけるというのは、ふん、気取りやがってと笑われることになってしまいます。キアヌが心の闇を深刻ぶって暗い顔を見せて、敵をやっつけるときの過剰な行動には、昔ならそれに魅力を感じて映画スターにあこがれを持ちました。けれども今ではいくら架空の世界でもこういうかっこつけは微妙なところでしょう。1980年代で日本では映画やテレビドラマでの過剰な演出を笑うということがネタになっていましたから、もうこの辺りから映画が夢の世界であることが薄れていき、映画の内容もリアリズムに視点を置き、おかしさを感じていったからでしょう。
でも過剰ではあるけれど、これはフランスのフィルムノワールのスタイリッシュな演出とハリウッド的な派手なアクションの映画と解釈しておきました。
ジョンウィック ひどい この映画はシリアスな復讐劇と思いきや実は。。。。
しかし、このシリーズの3作目を観たときに、まてよ、この映画は実はコメディなのではないかと思っていました。
要所要所で現れる日本描写のおかしさは日本についての誤解をしているとも思いましたが、殺し屋御用達のコンチネンタルホテルの違和感なども含めて、ああこれは笑わせようとしているんだと気が付きました。
これは的外れじゃないと確信できるのは、スタエルスキ監督の次のコメントを読んだからであります。
「私はこの映画を見て笑ってもらいたいと思ったんだ。だって子犬が殺されたからって、たくさんの人間を殺すなんてバカバカしいだろう?」
このコメントを知ってからはこれはコメディとして観るのが正しいとわかりました。
過剰な演出と演技でジョン・ウィックのかっこつけはアクション映画のパロディであり、殺し屋御用達のホテルなどこれはギャグだったのです。
一見シリアスに描いておかしみを出す、というのがこのシリーズの狙いだったのです。
コメント