ジュラシックパーク2ひどい ロストワールドジュラシックパークはなぜ酷評されたのか

前作の大ヒットを受けて製作された「ロスト・ワールド/ジュラシック・ワールド」ですが、興行的には成功を収めたのですが、批評的には失敗です。

なぜそうなってしまったのでしょうか?私的にはひどい作品とは思えませんが、まずは世間の評判について考えていきたいと思います。

ジュラシックパーク2ひどい なぜロストワールドジュラシックパークが酷評されたのか?①前作の繰り返し?

この映画が酷評されるのはなぜか?まずそのひとつとしては、この作品の前半が前作同様にジャングルの中で恐竜たちと人間たちが戦うというところが二番煎じに見えるからですね。同じことの繰り返しかということです。しかしまあ、これは後半で恐竜が市内での大暴れを描くための前振りといったことではないですかね。人間が恐竜のいる島に乗り込んで捕獲しないと市内での大暴れを描くことができません。そうでなければゴジラみたいに海底を歩いて、あるいは泳いで米国本土に上陸ということにしなければなりません。前作と違ったものをということで後半の市街へ乱入ということになったのでしょう。とはいっても市街乱入は東宝の怪獣映画でおなじみの設定であるので違いを出したと言っても二番煎じ、三番煎じ以上のものになります。

ジュラシックパーク2ひどい なぜ酷評されたのか?②ロストワールドが元ネタがダメなのか?

でもこの設定にしたのはタイトルにある「ロスト・ワールド」を元ネタにしたからですね。マイケル・クライトンもコナン・ドイルが書いた「失われた世界(原題はロスト・ワールド)」も意識したでしょう。しかし、スタジオとしてはこの原作を映像化したサイレント映画「ロスト・ワールド」(1925年)と混合するのではないかと危惧して「ロスト・アイランド」というタイトルも検討されました。しかし最終的には「ジュラシック・パーク」の続編と言うことを強調すべく、小説の題名そのまま採用しました。この映画の監督、スティーブン・スピルバーグも無声映画の名作である「ロスト・ワールド」を踏襲することで、この作品にオマージュも捧げています。

またスピルバーグはゴジラ好きですので、それに対するめくばせもあります。前作同様に水面に恐竜の足音が響くと波紋が出るところ、「ゴジラ」(1954年)でゴジラの足音が聞こえるところに似ています。

また市街で大暴れするとき逃げる住民の中に日本人と思しきエキストラがいます。封切り時では「ゴジラだ!」と叫ぶ字幕が付けていられましたが、今回視聴してみますとこの字幕はないし、彼らもゴジラだ!と明確に言っていません。しかし、この逃げる人々に日本人を混ぜるのはゴジラをも意識しているでしょう。

ジュラシックパーク2ひどい なぜロストワールド ジュラシックパークはなぜ酷評されたのか?  ③強引な展開が無理なのか?

次に「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」がひどいと言われるのは強引な展開があるからです。

前作の騒動でトラウマになったイアン・マルコム博士をまた恐竜の島に行かせるのに、彼の恋人であるサラがすでに島に入っているというところです。またマルコム博士の娘(肌の色が違うから恐らく養子としてという設定だろう)も彼に内緒で乗り込んでいたという設定まであると子供を出してファミリー映画としての体裁を整えたいとは言えこれも強引なわけです。

これはまあもっといい方法もあるでしょうが、物語を動かすためには少々強引なのもあってもいいのではないか、と私は考えます。この強引さは作品にとってさほどの傷ではありません。娯楽映画なんだから、これくらいはあってもいいでしょう、と私は許せますね。

ジュラシックパーク2ひどい ロストワールド ジュラシックパークがなぜ酷評されたのか? ④ヒロインがうざすぎる?

「ロストワールド/ジュラシック・パーク」がひどいとされるもうひとつの理由は、マルコム博士の恋人サラがうざいところでしょう。

彼女は恐竜に襲われる原因を作ってしまいます。不用意に恐竜に近づいて襲われるし、衣類に血がついたままなので恐竜に襲われるし、恐竜の子供が怪我をしたので治療のためにキャンピングカーに連れ込みそこを恐竜に襲われます。

まあ学者だというのに、恐竜に対して不注意なこと極まりないのです。当時でももう古い感覚であった足手まといになるヒロインを出していたのがもう時代に乗っていないなあと考えます。女性を役にたたない、あるいは非力なためにトラブルを起こすのはもちろんヒーローが彼女を助けるという主人公のかっこよさを際立たせるために必要な設定ではあります。だが、もう時代は女性が何の役に立たない、バカである、非力だからヒーローに守られるというのが昔の映画の作劇法でもありました。まあスピルバーグも古色蒼然としたこの女性に対する偏見もあったかと思いましたね。私はこの件も男尊女卑ということはあっても、これも娯楽映画の常套手段となれば、それもありとします。と言ったら怒られそうでありますが。そんな足手まといのヒロインを本来なら助けて守る位置にいるマルコム博士なのですが、彼は残念ながらインディ・ジョーンズでもジェームズ・ボンドでもありません。本作ではヒーローらしいことはしていません。

またこの古めかしいヒロインを描いた本作ではありますが、面白いことに「ジュラシック・ワールド」では改善しています。このシリーズでのジュラシック・パークの管理者サラとパークの研究施設に勤務するオーウェンは主人公カップルです。ここではサラは昔のヒーローが活躍する映画で描かれるような男に守られた無力な女ではありません。お互いを助け合って危機を乗り越える設定になっています。オーウェンは決してスーパーマンというわけでないのでピンチになるときは、サラが助けてしまいます。お互いに助け合っていく男女の関係っていいなーって思いますね。このふたりは私は好きですよ。

ジュラシックパーク2ひどい ロストワールド ジュラシックパークはなぜ酷評されたのか? ⑤スティーブン・スピルバーグが演出したからか?

この映画が酷評になったのは、娯楽映画の巨匠であったスティーブン・スピルバーグが滅多にやらない続編を手掛けたというのに、という気持ちがあったからと思います。今回は前作の大成功からハードルが高すぎたのだと感じました。期待値よりも下回ったからこうなったのでしょう。

私は娯楽映画の名手だったスピルバーグ監督のファンだったから、これも期待値は高かったのですね。しかし、出来上がった作品を観ていると傑作とは思いませんが、期待どおりでした。人物造形の雑さや、男尊女卑に見えるヒロインの扱い、強引すぎる展開などの批判は、私にとってはたいしたことがない疵なんであります。男尊女卑をたいしたことないと言ったらさるところからおしかりを受けるのでしょうけれど。話の展開上でこうなってしまったことが褒められたものではありませんが、ちょっと間違ってしまったくらいなものだと笑ってすませます。人間は完ぺきに作れるわけじゃありませんし、やっぱり見せ場がてんこ盛りで、退屈させるところがまったくないという彼の名人芸を味わったらそれでいいと考えています。

スピルバーグ監督の功績のひとつとしては1930年代から70年代なら低予算の安い映画の題材を、ハリウッドの大作として撮るというところにあるでしょう。SFやホラーやアクション映画などは低予算で無名のスタッフやキャストで撮るものでありましたが、スピルバーグはお金をうんとかけたA級の映画に仕立てあげました。これでSFやホラー映画も地位が向上しました。これらのジャンルも一流扱いされるようになったというのは、スピルバーグと「スターウォーズ」(1977年)をメガヒットさせたジョージ・ルーカスのおかげであります。

ジュラシックパーク2ひどい ロストワールド ジュラシックパークはなぜ酷評されたのか? ⑥スピルバーグ監督自身が失敗作としているからか?

とは言え、スティーブン・スピルバーグ監督自身が本作を失敗作だと認めています。スピルバーグはこの映画の撮影中に幻滅していったと話しています。

「自分を責めていらだちが募っていき、映画を撮るのが嫌になったのです。ただの轟音の大きな映画を撮っているような気がして、これで全部なのかい?僕には物足りないよ」と自問自答をしていたそうです。

もうひとつ、ニューヨーク・タイムズ紙のスピルバークへのインタビュー記事も紹介します。

スピルバーグは本作の批評的な失敗の責任を負い、自身のプライドを責めている。前作の成功によって過剰なエゴを招いた結果、いつものように次作に注力するだけの技術を注ぎ込めなかったと述べている。また続編を作るのは苦手だとも述べており、藝術的なインスピレーションではなく、前作の成功に突き動かされているとしている。

「私の続編はオリジナルほどよくない。それはこれまで作った続編にこだわりすぎて、自信過剰になっているからだ。前作は莫大な収益を得ており、それが続編を作る正当性を証明している。それで絶対成功するだろうと期待して臨むが、結局は前作よりも劣った作品になってしまう」

ジュラシックパーク2ひどい ロストワールドジュラシックパークはなぜ酷評されたのか? ⑦結局は面白い映画ではなかったのか?

スピルバーグ監督が失敗を認めているのだから私自身が擁護しても意味もないでしょう。けれども、でも監督本人に会うチャンスがあるなら、あの作品は失敗作じゃないですよ、あれはとても面白かったですよ、と伝えたいですねえ。

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