2026年1月16日、「ウォーフェア 戦地最前線」が公開されました。この戦争映画はユニークな作品です。
ウォーフェア戦場最前線実話 自分もその現場にいるような臨場感のある映画?
2006年のイラク。イラク中部ラマディでアルカイダの幹部のせん滅という任務を負った米軍が敵に包囲され、ある民家に押し入り閉じこもる。ここからの脱出を試みるというもの。しかし描かれるのはこの状態での米軍兵士の様子だけで、劇映画というのにドラマがありません。
平時ならどういう性格なのか家族はいるのか、なんで軍隊に入隊しているのか心情などまったくないので、劇映画として必要なこれらの描写がまったくないので、むしろ劇というよりドキュメンタリーのようです。
観客はその線上に居合わせた従軍記者みたいなもので自分でカメラを回して映しているような錯覚がします。まあ自分は弾に当たる心配がまったくないのでありますが、他の戦争映画とは異なる臨場感はあります。
ウォーフェア戦場最前線実話 現場で起こった状況だけを描いたドキュメンタリーのような劇映画?
このユニークな戦争映画を考えたのが、アレックス・ガーランド監督です。この映画の発想は彼自身の監督作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(2023年)の編集を終えたときに得ました。アメリカの内戦を描いたこの架空の映画の軍事アドバイザーを務めたレイ・メンドーサを、この「ウォーフェア戦地最前線」の共同監督として協力を仰ぎました。レイはイラク戦争に参戦していたこともあり彼を共同監督にすることで作品をもっとも活かせる人物だと思ったのです。
アレックス・ガーランドは、可能な限りリアルでリアルタイムに展開する戦争映画を作ろうと考えていました。
レイ・メンドーサが『シビル・ウォー』(2024年)のホワイトハウスのアクションシーンを振り付けたのを目の当たりにした彼は、レイこそが自分のビジョンを実現するのにまさにうってつけの人物だと確信しました。
ガーランドはレイに、何か伝えたい物語があるかと尋ねました。するとレイは、長年作りたいと思っていた物語があると明かしました。ガーランドにその物語を語り、レイはまずSEALsのチームメイトたちの承認を得ました。
ウォーフェア戦場最前線実話 兵士の証言だけで組み立てた?
映画で描かれたことは資料を当たったわけではなく、実際にイラク戦争に参戦した兵士の証言で成り立っているからです。映画の字幕でもかれらの”記憶”によって構成されているとしています。
映画の各シーンは、レイ・メンドーサとアレックス・ガーランドがインタビューしたSEAL隊員のうち少なくとも2人以上によって裏付けられています。
「ウォーフェア」は、ラマディ作戦での悲惨な出来事の後、自分に何が起こったのか覚えていないエリオット・ミラー(劇中ではコスモ・ジャーヴィスが演じている)へのレイ・メンドーサ監督からのラブレターともいえるものです。
ウォーフェア戦場最前線実話 徹底的にリアルに描く戦闘場面がユニーク
レイ自身が参戦したイラク戦争についてリアルな戦闘を描く本作では、アレックス・ガーランドとレイ・メンドーサが共同監督して、レイ自身を主人公にしてこの作品を描きました。とは言ってもレイ役には別の役者(ディファラオ・ウン=ア=タイ)が演じました。
キャストはオーディションを受けず、アレックス・ガーランド監督とレイ・メンドーサ監督との面接で選ばれました。これは、監督たちが俳優一人ひとりにふさわしい姿勢を求めていたためです。彼らは、この映画が俳優たちに精神的にも肉体的にも追い込む過酷な撮影になることを知っていました。
当初、アレックス・ガーランドとレイ・メンドーサは、役柄にリアリティを持たせたいと考え、俳優ではなく軍のプロを起用する案を検討していました。しかし、短い撮影スケジュールの中で非常に高度な演技が求められるため、経験豊富な俳優の方が良いだろうと結論付けました。
ウィル・ポールター、チャールズ・メルトン、ジョセフ・クインは、映画でのリーダー的立場に倣い、キャスト陣の中でリーダーシップを発揮し、現実のチームのダイナミクスを再現しました。彼らは、キャストが時間厳守を徹底し、当日に撮影する台本のどのページかを把握するなど、責任を負っていました。
キャストは撮影中にトイレに行く際も、ウィル・ポールターに許可を求めなければなりませんでした。このあたりも作品中によりリアルな演技を見せるように軍隊式の統率を採用していたのです。
ウォーフェア戦場最前線実話 米軍兵士とは別の視点も描いている?
この映画はある場所に逃げ場がなく追い詰められた米兵たちを描くのです。しかしそれだけではありません。かれらはイラクの民家にいきなり大穴を開けてその家にしばらく留まるのです。そして米兵らが去ったとき、恐る恐るこの家の家族が出てきて米兵たちを見送るのでした。
米兵士の悲惨な状況だけではなく、この戦場になったイラクの民間人もひどい目にあったという描写も入れている点では複眼的な視点により映画をより深いものにしています。この点が「ウォーフェア 戦場最前線」が薄っぺらではない厚みが出たのです。ここが筆者にはそういう視点もある厚みのある作品になっていると考えます。
しかし、敵であるアルカイダ兵士はまったくキャラクターがなく、顔も見せないのでただただ不気味な存在、人間じゃないような描写はどうかと思います。けれども米軍兵士が去った後にかれらが民家から外へ出て敵が去っている様子を伺う描写はそれゆえに効いている印象的な幕切れになっています。

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