ファスト・サーガ 「ワイルド・スピード」の軌跡PART1

「ワイルド・スピード」とは?

「ワイルド・スピード」シリーズは当初はカーアクション映画だったが、第5作目「ワイルド・スピードMEGAMAX」から車を使った強盗アクション映画になり、回を重ねるごとにアクションが荒唐無稽なまでに派手になっていく。2025年現在では2023年の「ワイルド・スピードファイヤーブースト」が最後で11作あるが、2026年に「ファイアーブースト」の続編が製作される。

「ワイルド・スピード」は2025年現在11本あり、短編映画、テレビドラマシリーズ、ライブショー、ビデオゲーム、テーマパークとあらゆるフランチャイズを展開するほどの人気シリーズ。ここでは映画に関しての展開を見ていくことにする。

「ワイルド・スピード」はいかにして企画されたか

「ワイルド・スピード」第一作(2001年)の監督ロブ・コーエンと主演のポール・ウォーカーは、前年に「ザ・スカルズ/髑髏の誓い」でも組んでいた。コーエンとプロデューサーのニール・H・モリッツはユニヴァーサル・ピクチャーズのタイトル未定のアクション映画を製作することに契約を結んだ。そこでコーエンは前に出演していたポール・ウォーカーに何かアクション映画の構想を提案してほしいと持ち掛けた。ウォーカーはトム・クルーズ主演の「デイズ・オブ・サンダー」(1990年)とアル・パチーノとジョニー・デップが共演した「フェイク」(1997年)を混ぜたものはどうかと提案した。その直後、コーエンとモリッツは1998年5月に発行された雑誌「Vibe」に掲載された記事、ニューヨークで活動しているストリートレースの秘密サーキットのことに着想を得る。そこでポール・ウォーカーが扮する潜入捜査官がロサンゼルスの地下ストリートレースの世界に入り込むという話を構成する。モリッツは「ピッチブラック」(2000年)を観て、ポール・ウォーカーの相手役はヴィン・ディーゼルが良いだろうと考えた。しかし、ディーゼルは何回も脚本を書き直させた。最終的にできたシナリオに納得して出演を承諾した。ドミニク役は設定では24歳なのだが、ディーゼルの実年齢は34歳だった。

「ワイルド・スピード」のこぼれ話。

ポール・ウォーカーはディーゼルの仲間のひとりマット・シュルツとの喧嘩場面を綿密な段取りを組んで行った。しかし何かしっくりいかず、即興でこの殴り合いを撮影された。

ミッシェル・ロドリゲスとジョーダナ・ブリュースターは撮影前は運転免許を持っておらず、この映画に出演するために自動車教習所に通ったという。ミッシェルはドミニクと恋人役で、ヴィン・ディーゼルとはプライベートでも役作りのためにデートを重ねていた。

モリッツはカラフルな車を揃えたが、この車が映えるように背景に写る家の持ち主に落ち着いた色に塗り替えてもらえませんか?と依頼した。

大ヒットしたのですぐに続編製作

そんなこんなで出来上がった作品は大ヒットしたのですぐに続編が決まった。製作者側はポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルの続投を望んだ。しかし、ディーゼルは前作よりも脚本が悪いと言って続投を拒否した。コーエンも続編を撮ることは辞退してしまう。このふたりは「トリプルX」(2002年)で再び組む。もっともヴィン・ディーゼルはこのシリーズそのものは嫌っていないようだ。ドミニクが主役でない作品でもゲスト出演はしている。けれどもこの2作目はディーゼルがまったく出てこない唯一の作品となっているのは、「トリプルX」が撮影中で出られなかったのである。またこの続編に出演しなかった理由として「ユニヴァーサル・スタジオ(本シリーズの製作会社)はフランシス・コッポラのようなアプローチをしなかった。80年代や90年代の続編のように、前作とまるで関連性のない話をでっちあげて、同じタイトルを付けるやり方をしていたんだ」と2015年の雑誌のインタビューに答えている。21世紀に変わったけれど80~90年から地続きで同じ手法できたことが気に入らなかったらしい。

ヴィン・ディーゼル抜きの続編

監督はジョン・シングルトンに決まり、シングルトンはウォーカーの相棒役に彼が監督した「サウスセントラルLA」(2001年・日本未公開)に主演していたタイリー・ギブソンを起用した。ジョン・シングルストン監督は前作のファンであり、この作品のオファーが来たときは興奮したそうである。

数台の車がトランスミッションの修理を頻繁におこない、撮影に間に合わせるためにこの映画の舞台になっているマイアミのショップ「アロンソトランスミッション」のスタッフは週末や夜通し作業をしていた。映画の終盤に出てくるガレージは実際の修理工場なのだと言う。撮影に間に合わせるためにここも映画の舞台に出そうと決めたのかな。

このシリーズの出演女優は運転免許を持っていない

またこの映画に出演しているデヴォン青木も前作のミッシェル・ロドリゲス同様に運転免許証を所持していなかった。それどころか運転もしたことがなかった。車社会のアメリカで成人になっても運転免許証を持っていない人もいるんかいなと思うが、まあ貧乏じゃなくても持っていない人は持っていないというところか。

といったところで、このパート2はまあまあ楽しめる作品ではあったが、ポール・ウォーカーの相棒はやっぱりヴィン・ディーゼルだなあと思う。このふたりがいてこそのシリーズだったと思う。だからヴィンも断らずに出ていれば良かったのにと思うのだ。

ジャスティン・リン監督の別の作品と地続きだった?

というわけで、2作目を断られたユニヴァーサル・スタジオは3作目に再びヴィン・ディーゼルにオファーした。だが、脚本の出来を嫌ってまたもやディーゼルは断った。ポール・ウォーカーや他のキャストも確保できなかったのでリブート版を製作することに決めた。脚本家のクリス・モーガンは新しいキャラクターを登場させて、車に関するサブカルチャーに焦点を当てたものにしようと考えた。そこで日本が世界最大級の自動車産業があることを踏まえ、東京を舞台にすることを構想した。プロデューサーのモリッツはこの3作目「TOKYO DRIFT」と似た要素を持つ「Better Luck Tomorrow」(2002年・日本では未公開の青春映画)を演出したジャスティン・リンを監督にオファーした。またこの作品には本作の出演者サン・カンが出演しており、役名が両作ともハンなのである。つまりは本作でのハンというキャラクターの背景はこの未公開作で描かれているという位置づけもある。この作品はシリーズ番外編かと思いきや、映画の終盤でヴィン・ディーゼルが出てくることで話がつながっていることを知る。いかに製作者側が彼にこだわっているのが分かるし、またこの俳優も脚本に不満があるから出ないということで、ドミニクというキャラを演じることは嫌っていないだろう。結局、ヴィン・ディーゼルの当たり役になるわけだし。3作目もドミニクの復帰作になる予定がディーゼルの出演拒否のためにこうなった。しかもポール・ウォーカーは本作において続投を見送られていて、やっぱりこのシリーズの主役はドミニクなのだ。

この映画では100台以上の車両が破壊された。TOYO TIREは作品に4000本のタイヤを、レイズエンジニアリングは170本のタイヤホイールを提供した。

3作目の興行的失敗は手痛い打撃だが、本シリーズの主役はドミニクだと認識した

しかしこの作品は興行的にはシリーズ最低作となり、やはりドミニクがいないとなあとなって次回作はヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーが演じたキャラの物語を模索することになる。

「ワイルド・スピード」は日本の宣伝部が考えたタイトルだが、本国でも好評だった

「ワイルド・スピード」は原題からと思いきや、原題は「THE FAST AND THE FURIOUS」だ。熱気に満ちた、勢いよく、熱狂的なと言う意味の慣用句である。しかし、この邦題は本国において一部好評である。The Hollywood Reporter誌はこの邦題を「さわやかでわかりやすく、アーケードのレースゲームのようなタイトル」と評して絶賛する記事を載せている。また11作目を監督したルイ・レテリエもこの邦題が一番好きなタイトルであるとインタビューで答えている。

 

原題からこのシリーズをファスト・サーガと呼んでいる。日本だとワイルド・スピード・サーガとしないといけないけれど、この3作以降は別の稿に変えて述べることにしよう。

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