ファスト・サーガ「ワイルド・スピード」の軌跡PART2

前稿で3作目までの展開をお話したので、今回は4作目からの製作裏話を紹介します。

3作目はリブート版として製作しましたが、興行的にも批評的にも惨敗しました。「ワイルド・スピード」シリーズはフランチャイズを展開してテレビシリーズ、テーマパークのアトラクション、ビデオゲームなどにいろんなものに映画の宣伝に扱いました。しかし、3作目の惨敗はフランチャイズ展開も功を成しえなかったこともあります。やっぱりドミニク役のヴィン・ディーゼル抜きでは観客を呼べぬと分かったのです。だからもうこれ以上、「ワイルド・スピード」を創るのはやめようということになりました。

「ワイルド・スピード」の出演を断り、新たな映画でやっていこうとしたものの・・・試みが失敗したヴィン・ディーゼル

2作目、3作目の出演を断った(それでも3作目の最後にはゲスト出演している)ヴィン・ディーゼルは「リディック」(2004年)「キャプティン・ウルフ」(2005年)「コネクション・マフィアたちの法廷」(2006年)など興行的にも批評的にも失敗作が連発していました。

 

焦ったヴィン・ディーゼルはユニヴァーサルにシリーズ再開の話を持ち掛けます。興行的に失敗続きのヴィン・ディーゼルとしてはヒット作となった「ワイルド・スピード」のドミニク役の復活を望み、ユニヴァーサルとしては3作目が惨敗したものの、ディーゼルが出演するならば、ヒットが望めるのではないかと考えて4作目「ワイルド・スピード MAX」(2009年)を製作するに至ります。ヴィン・ディーゼルはこの4作目が真の「ワイルド・スピード」の続編であると確信し、この4作目に続いて5作目も出ても良いという張り切りようです。しかしユニヴァーサルはこの4作目を様子見して、大成功を収めるなら5作目を製作する方針でありました。

シリーズ再始動する「ワイルド・スピード」

そしてドミニクが復活するならばと、第1作目の出演者ポール・ウォーカー、ミッシェル・ロドリゲス、ダナ・ブリュースターと再契約して彼らのキャラの復活も果たしました。しかし、ポール・ウォーカーはこのフランチャイズ展開で製作されるこの映画の出演には消極的だったそうです。

ジャスティン・リン監督の世界観になる「ワイルド・スピード」

そして興行的に失敗した「TOKYO DRIFT」(2006年)のジャスティン・リンが4作目をなぜか監督することになりました。そして5作目、6作目と演出を担当するのです。リン監督は3作目に登場したハンを復活させてサン・カンの再登板となります。おや、ハンは3作目で死亡したはずじゃないかと3作目まで観て、この4作目を観た人は戸惑ったでしょう。ジャスティン・リン監督はこのハンというキャラクターが大変お気に入りで、自身が監督したシリーズ作でない「Better Luck Tomorrow」(2002年・日本未公開作)にも登場させているので愛着のあるキャラクターなのです。またヴィン・ディーゼルは4作目の前に「ワイルド・スピード」の世界観で描く16分の短編映画「ロス・バンドレス」(2009年)を監督することを許可されます。この短編映画もフランチャイズの一環でしょうね。その中でもハンは登場します。演じるのもサン・カンです。

製作順が時系列ではない「ワイルド・スピード」のねじれ

しかし、ハンが登場することで時系列順になっていないということで、急遽4作目は3作目の前日談ということになり、「TOKYO DRIFT」の前に時間が戻るというねじれをおこしてしまいます。この処置には賛否両論の議論になりました。「ワイルド・スピードMAX」(2009年)から「ワイルド・スピードMEGA MAX」(2011年)「ワイルド・スピードEURO MISSON」(2013年)と時系列に続き、次の「ワイルド・スピードSKY MISSON」(2015年)が「TOKYO DRIFT」(2006年)と同時期の設定となっています。そして「SKY MISSON」の後に製作されたシリーズ作は時系列通りということになります。

 

そうしたこともあって何も知らずに製作順に観た人には混乱させてしまいます。私は最初観た時はアレレッと思いました。

ヴィン・ディーゼルの思惑通りの大ヒット

けれどもそんなねじれもなんのその、第4作は大ヒットしました。初週末だけで「ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT」(2006年)の興行収入を上回ったほどでした。3日間の興行収入もユニヴァーサルとしてはこれまで最高だった「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(1997年)の記録を破りました。「ロスト・ワールド」が7210万ドルで、「ワイルド・スピードMAX」が7250万でした。

そして続く「ワイルド・スピードMEGA MAX」が製作されます。ここでこれまでのストリートレースの要素を排除して、車を使った強盗アクション映画に変えていきます。観客層の幅を広げようと試みたのです。マンネリを防ぐ意味もあるでしょう。

ドウェイン・ジョンソンと二大マッチョの共演

この作品でヴィン・ディーゼルと同様のマッチョマン、ドゥエイン・ジョンソンが初参戦します。ヴィン・ディーゼルによると彼の参加は、ジャン・ケリーという少女のファンからの提案によるものだと言います。彼女はふたりの共演をスクリーンで見てみたいと提案したそうです。当初はこの役はトミー・リー・ジョーンズを予定していたそうです。

 

続く「ワイルド・スピードEURO MISSON」と本作品は二本でひとつのストーリーという趣旨らしいです。ジャスティン・リン監督がこの二本を担当して、彼のお気に入りのキャラクターであるハンを登場させました。この後の「SKY MISSON」は監督もジェームズ・ワンに変わります。従って、「EURO MISSON」から「TOKYODRIFT」へつながるわけです。

 

さてその「EURO MISSO」は前作「MEGA MAX」との二部構成なので、捜査官ホブスも続いて登場、死んだと思われたドミニクの恋人レティ・オルテスも、両作を監督したジャスティン・リンのお気に入りのキャラクター、ハン・ルーも出てきます。ドミニクの相棒、ブライアンも当然出ています。

ジャスティン・リン監督色に染まった?中盤のシリーズ作

シリーズ再開された「MAX」「MEGAMAX「EUROMISSON」まで演出したジャスティン・リンは番外編の「TOKYO DRIFT」も担当しています。それを意識しているのかどうか「TOKYO DRIFT」と似たようなセリフが出てきます。

ホブスが相棒のテジがクラッシクカーオークションに行った際に、ホブスが馬力と気筒数についてコメントした際にテジが彼の車に関する知識を皮肉をこめてからかいます。

「パンフレットをよく読んでいるんだな。誇りに思うよ」

これは「TOKYO DRIFT」では、主人公・ショーンが傲慢な高校生が挑発したときに皮肉を込めた返しをしているのです。その彼が馬力と排気システムについてコメントした後、ショーンは彼に「おおっ、パンフレットを読めるんだね」と答えたのです。

「TOKYODRIFT」で登場したハン・ルーはジャスティン・リン監督のお気に入りのキャラで彼が担当したシリーズ作品は必ず登場させています。おかげで「TOKYODRIFT」で死亡した彼のために以降製作されたリン監督作品は「TOKYODRIFT」よりも前の話になってしまいました。

 

ジャスティン・リン監督はアメコミ・ファンなのかアベンジャーズの揶揄をマッチョなドウェイン・ジョンソンにしています。セリフで「ハルク」とか「キャプテン・アメリカ」と呼ばれて、携帯電話の発信者番号表示には「サモアン・ソー」と出ています。

 

ロンドンの場面でドミニクとレティがレースしているときに、2階建てバスからレースを観戦するアジア人の少年が映っています。彼は「MEGAMAX」でドミニクとブライアンが金庫を引っ張るのを見守っていたのと同じ少年です。そして彼はジャスティン・リンの息子なのです。

カーレースのことはすっかり忘れた?

こうしてカーレースからすっかり離れてしまい、権力者側からのミッションをこなす007をだいぶ意識しているのであろう、大型アクション映画へと変貌します。

 

では次回作「SKYMISSON」以降の作品は別稿でお会いしましょう。

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