「ワイルド・スピード」を2回に分けて紹介しましたが、ここからは第7作「ワイルド・スピード/SKY MISSON」から述べたいと思います。
「EURO MISSON」は「SKY MISSON 」との2部作構成
「SKY MISSON」は前作「EURO MISSON」の続編と言う形になっています。 また第3作からジャスティン・リン監督がつとめていたので、彼の世界観で描いたとも言えます。
彼の好きなキャラクター、ハン・ルーを第3作から6作目まで起用しています。今回も登場しますから、監督も当然ジャスティン・リン監督かと思いきや、彼は今回はおります。
製作会社ユニヴァーサルは「SKY MISSON」を公開予定を前倒しに製作すると決めました。ジャスティン・リンは前作「EURO MISSON」の仕上げと「SKY MISSON」の準備が重なってしまったために、監督は辞退せざるを得ませんでした。
新たなマッチョ、ジェイソン・ステイサムの登場
今回はヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンの2大マッチョに加え、新たなマッチョ・スター、ジェイソン・ステイサムが参入してきました。実はステイサムは当初、「EURO MISSON」でルーク・エヴァンスが演じたオーウェン・ショウの適役にオファーされていました。ところが、彼の出演作「PARKER/パーカー」(2013年)「ワイルド・カード」(2015年)の都合で出演できませんでした。しかし、ステイサムとディーゼルは両者とも共演してみたいと望んでいたため、「EURO MISSON」のエンディングでちょこっと出演させて、今回の「SKY MISSON」でオーウェン・ショウの弟、デッカード・ショウ役で出演を決めました。
ジェイソン・ステイサム以外にも新たなキャラクターを投入
またユニヴァーサル・スタジオは本作で端役で登場させて、次作で重要な役を演じる俳優を探していました。それをデンゼル・ワシントンに依頼しましたが、彼は断りました。ハル・ベリーなど数名の俳優を考えましたが、結局カート・ラッセルで決まりました。政府直属の秘密工作組織のボス、ミスター・ノーボディの役です。
主役のひとり、ポール・ウォーカーの自動車事故死
そして本作が撮影中に重大な事件が起こります。主役のひとりであるポール・ウォーカーが2013年11月30日に自動車事故で悲劇的な死をとげてしまいます。翌日12月1日に撮影を中断して、本作の監督ジェームズ・ワンとユニヴァーサル社の幹部が電話会議を行います。そこでポール・ウォーカーに敬意を払いつつ製作を進める決定が下されます。ウォーカーの死去した時点で撮影は半分を過ぎたころでした。ポールの出番を彼の弟ふたりが演じて、顔はCGでポールの顔を合成して撮影していきます。そして今回でブライアンの別れを描くために脚本を書き直しました。
ポール・ウォーカーの死を代役と過去のフィルムからの使用でしのぐ
ブライアンは二人の弟が代役と務めた他、過去の「ワイルド・スピード」シリーズからカットした場面を使用しています。例えば、ドミニカ共和国のガレージでブライアンとミアが会話する場面は「MEGA MAX」でカットした場面を使用しています。
ユニヴァーサルはポール・ウォーカーの死後、この映画の北米ブルーレイとDVDの売り上げの一部をウォーカーの慈善団体に寄付すると発表しました。
ポール・ウォーカーに哀悼の意を捧げる
ポール・ウォーカーの死を迎えて混乱した製作でありましたが、作品は大ヒットして次作の製作にかかります。「ワイルド・スピードICE BREAK」(2017年)です。前作の撮影中にポール・ウォーカーの事故死を悼むところがある作品にもなりました。
すべての 車が収まっているガレージ内で3段式のカーラックに、「ワイルド・スピードSKYMISSON」でポール・ウォーカーが運転した車両が日産スカイラインGT―R乗っています。また、リトル・ノーバディを演じるスコット・イーストウッドはポール・ウォーカーと親友で、この映画の中でスバルのBRZとインプレッサWRXSTiを運転しています。これはスコットの愛車でもありましたが、「ワイルド・スピード」シリーズでポール・ウォーカー扮するブライアンが乗っている車でもあります。
政府の秘密工作組織のミスター・ノーバディが「最重要指名手配犯トップ10」リストの説明をします。
ドミニクの仲間であるローマンが11番目と言います。この部屋にいるのは6番、8番、9番、10番と7番が抜けています。これは7作目でポール・ウォーカーが事故死したことで、ブライアンが7番ということであります。
ドウェイン・ジョンソンとヴィン・ディーゼルの不仲
さて、本作ではシャーリーズ・セロンが新たに参加していますが、シリーズ初の女性悪役です。マンネリを防ぐために新規のキャラを出してきていますが、この作品では途中でレギュラーになったドウェイン・ジョンソンとヴィン・ディーゼルとの仲が悪くなりました。
ドウェイン・ジョンソンは自身のインスタグラムでヴィン・ディーゼルがしょっちゅう遅刻してきて他の共演者やスタッフに迷惑をかけたことを、「男性の共演者の中にはプロフェッショナルに欠けた臆病者がいる」と悪口を投稿しました。本作の終了後、ドウェインを主役したスピンオフ映画「ワイルド・スピード/SUPER COMBO」を撮影したために、「ICE BREAK」の次回作の公開予定が延期になってしまい、ドウェインもこの9作目には出演しないことになった。ドウェインはスケジュールの都合としているが、このあたりの亀裂のせいだろう。
だが2人は仲直りしたようである。「SUPER COMBO」の大ヒットを受けて、ドウェインはインスタグラムで「SUPER COMBO」のヴィンのサポートに感謝すると述べています。また新婚だったドウェインに祝辞を送ったヴィンに「10年前に君が俺をこの映画に誘ってくれたことを感謝している」と返礼を述べました。
これでひと安心だが、次回作「JAT BREAK」はドウェイン・ジョンソン抜きになってしまったがどうなったのでしょうか。
ジャスティン・リン監督とハン・ルーの復帰
さて「ワイルド・スピード/JAT BREAK」(2021年)ではジャスティン・リン監督が「EURO MISSON」以来の復帰となります。「TOKYODRIFT」以来脚本を担当していたクリス・モーガンは前作で担当を降りています。ジャスティン・リンが復帰して脚本も担当していますが、ここでリン監督のお気に入りのキャラクター、ハン・ルーも登場します。あれっ、ハンは死んだはずでは、となるとまた過去の話かと思いきや、本作の設定は前作の5年後なのです。ハンは実は死んでいませんでした、というシリーズにはありがちのものでこちらは虚脱感に見舞われるのですが、なんというかこんなご都合主義は久しぶりだなあ、と思いましたね。
さて「ワイルド・スピード/JAT BREAK」(2021年)ではジャスティン・リン監督が「EURO MISSON」以来の復帰となります。「TOKYODRIFT」以来脚本を担当していたクリス・モーガンは前作で担当を降りています。ジャスティン・リンが復帰して脚本も担当していますが、ここでリン監督のお気に入りのキャラクター、ハン・ルーも登場します。あれっ、ハンは死んだはずでは、となるとまた過去の話かと思いきや、本作の設定は前作の5年後なのです。ハンは実は死んでいませんでした、というシリーズにはありがちのものでこちらは虚脱感に見舞われるのですが、なんというかこんなご都合主義は久しぶりだなあ、と思いましたね。
もうひとりのキャラの復活
本作ではもうひとり、復活しているキャラがあります。ジョーダナ・ブリュースターが演じたミアです。ヴィン・ディーゼルは、ジョーダナ・ブリュースターの誕生日を祝う写真をソーシャルメディアに投稿しました。キャプションの中で、彼は『ワイルド・スピード スカイミッション』(2015年)で役柄を引退したブリュースターが、この続編で再び登場することを示唆しています。
結局、ドウェイン・ジョンソンは今回は出演せず
シリーズのレギュラーであるタイリース・ギブソンは2017年11月1日、ドウェイン・ジョンソンが出演するならこの映画には出演しないと発表しました。タイリースはヴィン・ディーゼル派でドウェインがヴィンを批判したときに真っ先に彼を批判しているのです。ジョンソンがこの映画への出演を辞退すると発表すると、ギブソンの出演は再び確実となりました。
女性のキャラクターの補強をした
ジャスティン・リンのは、ミシェル・ロドリゲスがシリーズにおける女性キャラクターの扱いについて公に発言したことに触れています。より具体的には、映画における女性キャラクターの立ち位置は男性キャラクターの行動に完全に左右され、その限定された視点以外には人生が描かれていないとしていて、現実世界の懸念に触れています。リンは「シリーズに参加していた頃は、女性キャラクターもそう感じていたので、俳優陣と共にキャラクターを作り上げていくのはとても楽しい時間だった。だから、本当に奇妙な感覚だった」と語っています。リンは、自分が降板した後に何が起こったのかは知らないとしながらも、ロドリゲスが動揺していたことを認め、それを受けて東京のシーンに、レティとミアが静かに思い出に浸りながら夕食を楽しむシーンを追加したと述べています。
リアリティを目指したアクション・シーン
ジャスティン・リンは、アクションシーンをよりリアルなものをと考えました。そのため、地雷原を車が走り抜け、爆発するシーンが生まれました。CGが昨今の大作映画製作の大きな要素となっている一方で、「実写効果には本当にエキサイティングで、直感的な何かがある」と考えているとしました。そのため、アクションシーンがどんなに奇抜であっても、「まずは実写で撮影するようにしている」という方針でした。それでもCGが目立つのは21世紀映画では仕方ないことでしょうかね。
さて「ワイルド・スピード/ファイヤー・ブースト」は今のところ(2025年)では最終作でありますが、どんな製作になったのでしょう。これは別稿で番外編の「スーパーコンボ」と合わせて述べましょう。
コメント