ズートピアは明るく楽しいだけではない?社会問題に焦点を当てているのにも注目

2025年12月5日に第二作目が公開される「ズートピア」シリーズはメディア・フランチャイズです。

メディアフランチャイズというのは、映画・書籍・コンピューターゲーム・漫画・アニメ・テレビ番組という複数のメディアと絡めていくものです。

ズートピアはビデオゲームやアトラクション(上海ディズニーリゾートでアトラクションを展開)、コミックブックでフランチャイズを展開しています。

またウォルト・ディズニー作品ですから、ディズニー制作の「シュガー・ラッシュ:オンライン」(2018年)、「ウィッシュ」(2023年)で主役のジュディ・ホップスとニック・ワイルドがカメオ出演しています。

また「ズートピア」の複数のキャラクターが「ワンス・アポン・ア・スタジオー100年の思い出」(2023年)というディズニーカンパニーの100周年記念短篇映画に出演しています。この短篇映画は「ウィッシュ」の併映でした。

ズートピア偏見 ファミリー映画としてのディズニーアニメーション

さて、「ズートピア」というアニメ、ディズニーなんだから明るく楽しいご家族そろって楽しめるというイメージがあるでしょう。その期待通りの作品です。

けれどもこの作品で意外なのは差別と偏見についてのお話でもあるんです。いろんな動物が出てくるのですが、その動物のイメージからくる偏見を描写していきます。

ここからは偏見や差別をどう描いたか具体的に説明するためにネタバレします。未見の方は鑑賞後にお読みください。

ズートピア偏見 ディズニーアニメも現代的な視点を入れざるを得ない

主人公はうさぎの若い女性ジュディ。彼女は警察官になりたいのですが、警官という職業はうさぎに向いていないとされています。うさぎはかわいいので野菜を売る仕事という決めつけがこのアニメの世界ではあります。またかわいい非力な女性であるから、犯罪者を相手にする警察の仕事は向いていないとされます。ジュディの両親も夢をあきらめたからこそ八百屋ができるとしています。が、ジュディはなりたいものになると決意するわけです。

人間社会における偏見とそこから派生する差別意識と同時に、女性が男性に寄り添う補助的なものではなく自身が活躍するということを描いていきます。そこは今日のどこの国でも問題にしなければいけない課題として提示しています。そして詐欺師のキツネ、ニックを相棒に事件の捜査をします。ここでも女性が男性の補助じゃなくて、ジュディが主導権を握ってニックが補助しているかたちを取っています。

しかしこの映画、最初はニックが主人公でした。試写会をしたときの観客の反応がわき役だったジュディに対する共感が多かったために、ジュディの方を主役にしてストーリーを変えて作り直しました。

ズートピア偏見 うさぎのジュディがヒロインなのは現代的な視点でもある

当初は女性の社会的な活躍という意味合いがなかったのですが、試写会をしてニックよりもジュディが好感を持たれての女性に向かったのでこうなったというわけ。

思えば、女性が白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるというイメージはディズニーアニメ「白雪姫」「シンデレラ」などが世間に広く伝わったものではないでしょうか。そのディズニーも21世紀に入り、ヒロインも自分の願望を待っているのではなく、自分から取りに行くという設定に変えていったのも時代の流れを感じますね。

ズートピア偏見 自分の内なる無意識な差別

そしてジュディは自分にはそんな偏見も差別もしていないと思っていますが、そうではありません。あこがれの警察勤務ですが水牛のボゴ署長は彼女に交通違反の切符を切る仕事を命じます。

ジュディとしては犯罪者を追いかけて逮捕する仕事を希望したけれどそれがかなわないとショックを受けます。で、交通違反の取り締まりは警察官の仕事ではないと彼女の無意識でありますが、偏見と差別感があるのです。

差別はいけないという人でもまったく偏見がないわけではないというところまで描写があるのでジュディのキャラに深みが出るし、私たちも無意識に差別的な言動をしていたと気が付かされます。

そんな社会派的なテーマを描いているのに従来のディズニーアニメのように明るく楽しくポジティブ思考で生きる希望が湧いてくる映画なんですよ。ボゴ署長はジュディに「歌えば願いがかなうなんてミュージカル映画みたいなのは現実にない」と言うけれど、いやいやディズニーアニメというかハリウッド映画はこういうコンセプトで映画を作っているんじゃないのとツッコミを入れるところです。

はい、この作品も自分のしたいことが願うというポジティブな映画なんですよ。

白雪姫とポリコレの衝突が生む新たなヒロイン像と無味乾燥な作品になる問題
思うに白馬に乗った王子が迎えに来るというフレーズはディズニーのアニメから広まった比喩ではあるまいか。「眠れる森の美女」「シンデレラ」「白雪姫」は原作童話でも書かれていることだけど、王子様がやってきてヒロインと結ばれるという寓意はこれらのアニ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました