バケモノの子声優ひどい!アニメのキャスティングは声優よりも俳優がいいのか?

※この記事はネタバレで記述しています。まだご覧になっていない方はご遠慮ください。

「バケモノの子」は2015年の作品です。細田守監督はこの作品について語っているものを要約します。

着想のきっかけは3年前の前作「おおかみこどもの雨と雪」の公開後、僕に息子が生まれたことがきっかけです。前作では「子供を育てるお母さんは大変な思いで子育てをする。それが素晴らしい」という映画がないなということが着想のきっかけでした。

今回は「こどもがこの世の中で、どうやって成長して大きくなるのだろう」ということを考えました。子供というのは親が育てているようで、実はそうではないのではないか。もっとたくさんの人に育てられているのではないかという気がします。

父親のことなんか忘れて、心の師匠みたいな人が表れてその存在が大きくなったら、本当の父親など忘れるのではないか。それが微笑ましい、それぐらい誇らしい成長と遂げたらうれしなということを自分の子供に対して思うのです。子供がたくさんの人から影響を受けて成長する姿をこの映画を通して考えていきたいと思います。

このコメントを聞くとなるほどなあと思いました。でもこの映画が他の映画でもよくあるような師弟関係ではありません。

バケモノの子声優ひどい 主人公が修行の末に成長する物語

師匠は人格者であるのが普通で、弟子は師の姿を見て成長するものです。

しかし主人公・久太の師匠・熊徹は人格者じゃなくて乱暴で間抜けなところもあるという憎めない欠点を持っている。熊徹の指導で久太は成長したのではなく、熊徹の仲間とのかかわり、また人間界の少女・楓のかかわりによって成長していく

という点が他の同種の作品とは違った特徴です。

バケモノの子声優ひどい 主人公の青年にとって師匠であり父親でもある存在

師匠が完璧ではなく、弟子の久太と暮らすことで互いに成長する話です。そして最後には今の自分とは別れを告げて、太刀の付喪神に生まれ変わり、久太の胸の中にいることで弟子と一体化してしまいます。

熊徹は久太にとって心の師であり父親代わりにであって、久太が死ぬまで一緒にいることになるというのは親としては本望なのかもしれません。これが熊徹が師匠らしからぬ半端者なのに最後には本当の師にふさわしい存在になってしまうというところに、私はとても感動してしまったのです。

久太は自分と亡くなった母を捨てた本当の父親に恨みがありましたが、それも払拭して一緒に暮らすことを決めました。

そういう成長物語が意外と良いんです。本作を観る前はこんなに感動できるとは思いませんでした。これは嬉しい作品でした。

バケモノの子声優ひどい 主要キャラは声優ではなく俳優が大半の作品

さて、そんな予想外の面白い作品ではありましたが、本作の否定的な感想に、声優がひどいと言われていますね。

本作のキャスティングは声優専門ではなく、主要キャストに画面に顔出ししている俳優を多く配役していますね。こういうキャスティングはその俳優の顔が浮かんできてマイナスとよく言われましたが、わたしは本作品ではそうは思われません。役所広司や津川雅彦はさすがにベテランらしく、自身が前に出てくるような声の演技をしていませんでした。

声優がひどいとおっしゃる方は彼らを批判しているのではなく、この映画の製作当時の若手俳優である久太の青年期を演じる染谷将太と久太の彼女であり彼の成長を助ける楓を演じた広瀬すずに集中していますね。

大雑把に言うと染谷は棒読みセリフと活舌が悪くて声だけの演技ではこの欠点が露呈した。広瀬はキャラの動きとあっていないとしています。

ふたりともアニメの吹き替えは本作が初めてでありますから、慣れていないということもあるでしょう。

バケモノの子声優ひどい 染谷将太と広瀬すず そんなにひどかったのか?

細田監督は染谷将太については、

「おおかみこどもの雨と雪」のときにオーディションでお会いして素晴らしい才能だなと感じていましたが、残念ながら彼に合う役がなかった。そこで小学校の先生の役で短い出番で参加していただいたのですが、もっとメインの役でがっつり取り組んでいただくために今回キャスティングしました。「おおかみこどもの雨と雪」のときの宮崎あおいさんと染谷将太さんが今回同一人物を演じることは思ってもみませんでした。しかし久太の子供時代を演じた宮崎さんから染谷さんにバトンタッチしたことにまったく違和感はありませんでした。アフレコの前に宮崎さんと染谷さんの顔合わせとテスト収録をしたのですが、お互いに意識してもらって役に臨んで頂いたのが良かったのでしょう。

また広瀬すずについては

今回アニメのアフレコは初めてとお聞きしていたのですが、すごい才能の方だなと思いました。ヒロインではありますが、お姫様的ではなく、久太の同志となる存在です。

広瀬さんの声が表現しているのはかわいい女の子ではなく、魂で共鳴しあえる同志であると。

楓は熊徹とはまた違う久太の師でそれを担うには広瀬さんしかいませんでした。実際にアフレコすると表現力のダイナミックさ、情報量の多さになんでこんなことができるんだろうと現場で驚くことが多かったです。

広瀬と染谷の声優ぶりを批判する人々とはだいぶ乖離のあるコメントですね。

キャスティングした以上、細田監督が彼らについて酷評するわけがありませんが批判的な人々からはズレがあるわけです。

同じ映画を観ても、個々で違った感想が出るのは当たり前のことでしょう。作り手の想いが鑑賞者に伝わらないこともままあることです。それぞれの気持は尊重し、自分の意見と異なることもそういう意見もあるのかと違った視点があると参考にするのが良いでしょう。

バケモノの子声優ひどい 染谷将太と広瀬すずはちょっと硬かったかもしれない

私自身は染谷にも広瀬にも難はないと思います。声優専門出ない役者たち、他にも大泉洋やリリー・フランキーらを起用していますが、私はこれらに関して演じた俳優の顔が浮かんでくることはありませんでした。むしろ後で配役を知ってえっ、この役は彼が?という驚きがありました。

この声はあの人かということはまったくありませんでしたから、このキャスティングは良いと思いましたね。

宮崎駿監督は自分の作品に声優よりも俳優あるいはタレントを起用するのはなぜかと問われた時の答えを思いだしました。

今の声優はアイドル化して声優自身が表に出てしまう。そのため声優は役を演じるのではなく、自分のキャラに役を引き寄せている。つまりは演技をしていない。だから声優は普段話している口調で担当した作品は全部同じ声質となっている。自分の声の特徴に役を合わせるだけだから。ところが俳優なら当然与えられた役のキャラを理解して演じ分けていく。だから俳優を起用するんだと。

本作での俳優はキャラよりも声が前面に出ているわけでないし、演じている俳優はプロらしく役のキャラを演じています。私はこの作品は良作だと思いますよ。

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