2026版のスーパーガールはやさぐれてて飲んだくれという型破りのキャラクターです。清廉潔白でさわやかで健康的というのが従来のキャラクターと異なるところで勝負に出ていますね。これが受けるかどうか製作者側も賭けに出たようです。今時、ヒーロー側には一点の曇りのないキャラなんて受けないと思ったのでしょうか。本作のスーパーガールときたら半グレであり、ひねくれています。そんなキャラであるうえに復讐ものなので、すっきりせずに少し重たい雰囲気があります。
やっぱりこの手の映画はすっきりさわやかに行きたいもの。そこで1984年のヘレン・スレイター主演の作品を紹介します。主役のヘレン・スレイターは清廉潔白、健康的な美女というのが今の「スーパーガール」とは真反対の方向であります。けれどもスーパーヒーローはこれじゃないといけません。だから彼女が選ばれたのでしょう。もしかすると今の人にはこれが清らかすぎてつまらなく感じるかもしれません。
スーパーガールヘレンスレイター ヘレンスレイターが抜擢されるまでいろいろ候補がいた
この映画は「スーパーマン」(1978年)が大ヒットし、「スーパーマンⅡ冒険編」(1980年)も当たったので、「スーパーマンⅢ 電子の要塞」(1983年)も製作することが決定しました。作中にスーパーガールの登場を考えたのですが、製作・配給するワーナー・ブラザーズは当時のスーパーガールはマイナーなキャラクターだったため難色を示しその案はボツになりました。
そこで「電子の要塞」の前に単独での映画化に踏み切ることになりました。結果として「スーパーガール」と「電子の要塞」は評判も興行的にも惨敗したため、スーパーマンの権利をキャノン・グループに売却しました。
当時としては惨敗したけれど、後になって一部の人から再評価されカルト・ムービーとなりました。本作の主役、もうスーパーガールそのものの感じのヘレン・スレイターですが、最初から彼女に決まったわけではありません。
数百人オーディションに参加しました。その中にブルック・シールズもいましたが、彼女は高すぎる身長(183センチ)で落ちました。スーパーガールは強いとは言え、スーパーマンみたいに筋肉もりもりとはいかず、かわいらしいというイメージに合わないんでしょうね。彼女は眉毛も太いし。他にメラニー・グリフィスやデブラ・ウィンガーもいましたが、彼女らも不採用です。デブラ・ウィンガーはテレビシリーズの「ワンダー・ウーマン」(1977年)で主人公の妹役を演じていましたから、この役もイケると思ったのかもしれません。
結局、ヘレン・スレイターに決まったわけですが、彼女は違った役でのオーディションも受けていました。スーパーガールのルームメイトのルーシー・レイン(スーパーマンの恋人ロイス・レインの妹という設定)の役ですね。この役にはデミー・ムーアも候補に挙がっていたのですが、彼女は出演している映画の撮影がこれと被るのでボツです。350人が面接を受け、その中から50人に絞り、さらに見込みのある8人が監督やプロデューサーが面接したのですが、この中でヘレンが最有力候補だったのです。また、プロデューサーも監督も無名の女優がいいという希望もあり彼女が大役を得ました。
ヘレン・スレイターは役作りに筋トレを開始、3か月かけましたがその成果は飛行場面に出ています。「スーパーマン」で評判になったスーパーマンとロイス・レインの飛行場面をよりファンタジックに描いておりこれが「スーパーマン」より優れた場面になりました。その効果を最大限に生かしたスタッフの努力もさることながら、ワイヤーで吊るされたヘレンが本当に空中に浮遊している演技をしていることも称賛されますね。
スーパーガールヘレンスレイター 本作の悪役フェイ・ダナウェイのわがままが役者とスタッフの反感を買う
本作の悪役であるフェイ・ダナウェイの撮影中での傲慢でわがままな態度は共演者やスタッフの反発を買いました。
彼女の手下役のブレンダ・ヴァッカロがフェイに向かってセリフを言う場面で、フェイは彼女と一緒の場面に収まることに癇癪を起してしまいました。クローズ・アップで撮るからと監督は言いましたが、フェイは怒ってセリフを言いませんでした。これにブレンダも起こって撮影現場から出て行ってしまいました。
フェイは衣装スタッフにも癇癪を起してトラブルになっています。ブレンダはフェイを自分の見た目ばかりを気にして衣装にも文句言っていると、撮影終了後にインタビューで批判しました。共演者であるピーター・クックもフェイの不遜な態度にプロデューサーに不満を訴えました。彼以外にも共演者やスタッフがプロデューサーに文句を言ってくるので、フェイ・ダナウェイを降ろしてしまおうかという検討を行いました。その候補としてアンジェリカ・ヒューストンとジェーン・フォンダの名前が挙げられています。ジェーンはブレンダの役のオファーがありましたが、ボスの手下役はいやと断っています。今度はボス役だから引き受けてくれるのではあるまいかと考えたようです。結局は完成した映画を観てみればフェイは降ろされていません。その間の共演者やスタッフのストレスも大変だったでしょうね。
スーパーガールヘレンスレイター ヘレン・スレイターは性格もスーパーヒロインそのもの
こんな批判が渦巻くなか、ヘレン・スレイターは違う意見を述べました。40代半ばになって良い役を得られなくなり、周囲との軋轢から解雇寸前だったダナウェイの焦りに同情し、そうした色々な感情の不安定さが爆発したのではないかと彼女の心情を推し量っています。
自分も40代になったらそうなるかな、と想像したかもしれません。ですが、相手を悪く言わないという態度はまさに正義の味方、スーパーヒロインにヘレン・スレイターが起用されて良かったということですね。
ヘレン・スレイターのキャスティングは完璧だったのです。そして飛行場面が「スーパーマン」より向上したテクニックを披露しました。それなのに、当時の評判が悪かったのは演出がいまいちだったからですね。またスーパーガールと悪役の対決が男の取り合いというちゃちな目的になってしまっているのもなんだかなあというところでしょう。プライベートなこと、と言えば今回のスーパーガールも私情が行動目的なんですけどね。正義の味方なんだから、社会の治安を守るという大きな目的を挙げなきゃあと思いますね。
ヤノット・シュワルツ監督は次回作『サンタクロース』の準備に追われて試写に参加していなかったが、とても評判が悪かったことを後から聞いて、顔を出さなくて済んだのは幸いだったと後に述べています。
しかしこれがスーパーヒロインを描く王道のコンセプトで描かれるために、後からファンがたくさんできたことになります。私自身リチャード・ドナー監督の傑作「スーパーマン」ほどにはないにしろこれは面白いと思ったので、なんでこんな不評が出るんだと思っていました。
「電子の要塞」の監督シドニー・J・フューリー監督はリチャード・ドナーに何かアドバイスをと頼んだ時に、ドナーは「スーパー・ガール」の飛行場面が素晴らしいからアドバイスはシュワルツに頼んだ方がいいな、と言ったそうです。

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